〜心に花を〜 鹿児島・福岡遠征記9

Act 7.Scene1. <3月2日 アビスパサテライト練習見学>

いよいよ最終日。午前中にアビスパのサテライトの練習を見に行こうと決めた私たち。
若干寝坊気味ながらも、ホテルの豪華な朝食バイキングにあっさりと目がくらみ必死にお腹につめこみます(笑)
サテライトの練習場所がある西戸崎は半島の先の方。私たちがいたホテルからだと電車よりも船がどうやら便利そう。

船なんて乗るのはいったいいつ以来でしょう?ずいぶんと子供の時?そんなことを思ってはしゃぐ私。
練習は9時半からとのこと。船を降りてから1駅分電車かバスに乗り、そこから歩けばいい。
そう楽観的に思っていたのですが、アビサテはそんなに甘いところではありませんでした・・・。

船を降りるとすでに時刻は練習開始に近づいています。
1時間に数本しかない電車の時刻には間に合わなそうですし、最悪タクシーか?と思ってもタクシーもどうやら捕まらなさそうな気配。
どうしようかと考える私たちの前を一台のバスが走ってきました。これに飛び乗れば行ける!そう思って走って乗り込む私たち。
まさかこの時に携帯をポケットから落としていたなんて・・・(殴)

息を切らしながら西戸崎のバス停で降ります。ここからどうやって行けばいいのでしょう?
実は朝にアビスパの球団事務所に電話をして「西戸崎のグラウンドにはどうやって行けばよいのでしょう?」と聞いていました。
その時の広報の方の回答が、行き方を説明した最後に「ああ、でもあそこは空き地ですから目印とか何もないんですよ」とのこと。
この回答に大いに不安を抱いてはいましたが、今来てみてもさっぱり解りません。

困った私たちがとりあえずこちらだと思う方向に進むも確信は持てず、疲労感は増すばかり。
「前田隆への道は険しい」そんなことをぶつぶつとつぶやきながらひたすら歩きます。
公園の管理事務所のおばさんに尋ねてみると
「うーん。アビスパ?雁ノ巣のところじゃないの?あ、そう言えば何か同じジャージ着た男の子達が
向こうの所で練習してたよ。それかな?」
地元の人にとってもそれ位の認知度なんですね・・・。いくら今年からできたばかりとは言え・・・。

ひたすら教えて頂いた道を歩いていきます。途中でやけになっていた私たち。
道路を行くのも嫌になり、ショートカットするために野原を横切っていると目の前に丘が見えます。
「どこにいるんだー!アビスパー!!」周りに誰もいない野原なのをいいことにそんなことを叫んでいる私たち。
「こんなこと叫んでてさ、あの丘の向こうで練習してたらどうする?」
「ええ!そしたらまずいね。Uターンするしかないでしょう(笑)」
まさか本当にその野原の丘の向こうの空き地に黒いジャージを着た集団がいるだなんて・・・・。

アビスパのトップの練習を見た時に私は他のチームの練習を見たことが無いと書きました。
アントラーズの施設は素晴らしい。そのことは解っているつもりです。だからそれを基準にするつもりはありません。
それでもT字路の角を利用した野原で本当に練習しているアビスパの黒いジャージの集団を見た時の
ショックは消せるものではありませんでした。

「空き地ですから」広報の方がそう言った時に「何て呼び方してるんだ?!」と私は笑いました。
しかしその表現が何も間違っていなかったことを現実として突きつけられたのです。
どう見てもそこはサッカーの練習をする為の場所ではありません。
それは地面に置かれた五角形のベースがあり、その後にだけフェンスがついていることが物語っています。
つまりここは元は草野球場だったところなのでしょう。
地面には芝生と呼べるものは生えておらず、誰も草野球場を使わなかったから雑草が少し生えてしまいましたという程度。

隣には大きなごみ処理場の煙突が立っており、周りを見渡してもどこにも更衣室どころかトイレさえも見当たりません。
前にあるガソリンスタンドのトイレを借りたりする?その想像が外れてるとは断言できないですよ。
これならはっきり言って私の家の前の公園の方がいい芝生が生えてます!

申し訳程度につけられている駐車場から呆然と見ていた私たちですが、ともかく練習を落ち着いて見学しようと
少し離れたところにあるベンチのところに行って座ります。
もちろん見学者なんて私たちだけですし、練習しているところと見学者をしきる物なんて何も存在しません。
何しろ大きく外れたボールを私が蹴りかえしたりしてるくらいですから!

監督の方が1人。スタッフの方が3人。選手が全部で10人という構成で練習は進んでいます。
私たちがそこについた時はすでに半分程練習時間が過ぎており、練習は2対2でDFのかけ方と外しかたをやっている様子。
隆君はあの独特の姿勢と歩き方ですぐにそれと解りました。
オレンジの#25と番号の入ったビブスを着けた隆君はもちろんDFをする方で入っています。

しかし昨日1日がよほど堪えていたのでしょうか?少し動いてはがっくりと両手をひざにやり、普段にこにことしている顔もどこか辛そうです
練習に実際に入っているのは4人ですから、残りは間を利用して軽くピッチ(と呼べる様な枠があるわけでもないのですけど)の
端までジョギング程度に走り戻っていくのですが、隆君はどう見てもジョギングというよりはウォーキング。距離も気持ち短め・・・。

これが終了すると今度は5対5に別れてミニゲームが始まります。
アビスパのサテライトにはGKは誰もいません。よってゴールを守るのは監督とスタッフ。
ということはこれからもずっとサテの練習ではGKはいないということですね。
DFとGKの連携。FWのGKのかわしかた。どこで身につけていけばいいものなのか・・・・。

隆君はDFラインに入りボールを追いますが、なかなかうまくはいきません。
唯一の見せ場は右を駆け上がり豪快なシュートを決めたシーン。
2年の頃にやっていた右SBでも試されている。そういう話を聞いています。

サイトを始めて以来、基本的にサッカー関係の物を見た時は何でもメモを取る様に心がけている私ですが
この日ほどメモが埋まっていないことも珍しかったです。
練習も目の前で行われているのですが、私の意識はどうしても眼前で行われている光景ではないところに飛んでいっていました。

「今年は新人を強化していく」アビスパのフロントがそういう風な方針を打ち出し、
その目標のために大量の新人を補強し、40人以上の選手を抱えることになった。
アビスパのことをそういう風に聞いていました。
そのため今まで一緒に練習していたトップとサテを別にするとのことでこの西戸崎にグラウンドを借りたと。
たぶん今年入団した選手の多くがそういう話を聞いて入団してきたのでしょう。

ここがサテライトとは言えJ1リーガーが練習する場所・・・・。

練習がどうやら終了した様子。スタッフも選手も関係無く皆で道具を一個所にまとめて車に向かって運んでいきます。
とりあえず監督とおぼしき方の所に行き「すみません、選手と接触しても大丈夫でしょうか?」と許可を求めます。
気さくな方で「俺とは話さなくてもいいの?」そんな軽口をおっしゃっていました。
できることならばこれから3時間くらいお酒でも飲みながら、じっくりとアビスパの今後の方針についてお話をお聞きしたいです。
思わずそんなことが頭に浮かんでしまう私・・・(苦笑)

はっと前を見ると隆君が車に乗り込もうとしています。着替えもここでするわけではないですから移動もすばやいのです。
とりあえず呼び止めて昨日の卒業式で撮らせて頂いた写真を渡します。
「昨日ユニフォーム交換しようって言い出したのはどっちなんですか??」
そんな私の問いかけに「山形です」と答えてくださいました。

他の皆は車に乗り込んで待っています。そんな状況で長く引き止める訳にはいきません。
「お疲れ様でした。頑張ってください」
選手と接触させてもらった後に必ず言うようにしているこのセリフ。
こんな切実な気持ちで言ったことは今までの私はなかったかも・・・。

3台に分かれた車が走り去り、残された私たちは駐車場に座り込んでいました。
横に広がるグラウンドという名の空き地を見つめ、思い思いに感じたことを話します。
ハングリー精神。その一言で片づけてしまうにはあまりに大きすぎる何かを抱えながら。

「それでも彼が自分で選んだ道なのだから」

Act 7.Scene2. <3月2日 一蘭・二島・そして帰京>

1時間に1本しかないバスに乗り天神へと向かいます。
ここでカメラを現像に出し、インキューブというお店のアビスパショップに向かいます。
そこで見たのは2年前のフロンターレとのあの昇格戦で、山下芳輝さんがゴールを決めたスパイクをかたどった“黄金のスパイク”
2年連続ぎりぎりでJ1に残留したことを受けて、アビスパグッズの受験のお守りとしての人気を書いた新聞記事のスクラップ。

その後に歩いてすぐ側にあるラーメン屋の一蘭へと足を運びます。
もうお昼時は過ぎているというのに行列ができ、入り口にはたくさんの芸能人やスポーツ選手のサインが貼ってありました。
中で麺の固さや味の濃さ。にんにくの量など色々調節することができます。
値段も高くない割りにはおいしく「さすが誠史君お薦めの店」と感心することしばし。

ここで飛行機の時間が早いお連れ様1人と別れて、最終便での帰京を考えている私たちはまだ時間に余裕が。
博多駅まで地下鉄で向かい、JRの切符売り場に向かい運賃表でこの二文字を探します。

二島

折尾の駅まで快速で1時間弱。そこから1駅先が目的地二島。
ここに行くのは初めての私。電車に乗りながらも色々なことを考えます。
どうしてここ二島からヒガシの10番を背負う人が3人も連続で出てきたのでしょう?
ここに行ったら答えが見つかる。そんな訳ではないはずなのだけれど。

駅から歩いて少しのところにあるお寿司屋さんで九州旅行最後の贅沢をすることに決めました。
福岡はお魚がおいしい。そう聞いていましたが、出して頂いたお魚はどれも本当においしくて
穴子・ウニ・白身のお魚など何種類ものたくさんのネタが入った太巻きは、ほっぺたが落ちそうなほどでした。

お店の皆様も本当に良い人達ばかりで、常連さんが多いと思われるお客の方も
私たちが関東から来たと知ると気さくに声をかけてくれ、最後まで九州の方への感謝の気持ちで心が温かくなりました。

「何時の飛行機に乗るの?」
今日帰京する旨を告げるとそう尋ねられ、9時半のフライトであると答えると快速が止まる折尾の駅まで
車で送っていくと申し出てくださいました。あまりの申し訳なさに固辞したのですが
「今日は暇だから大丈夫」
そう言って車へと手招きをして私たちをいざなってくれました。本当に申し訳ありません。ありがとうございましたっ!
また私がここに来ることがあったら、絶対に寄らせて頂きます。
その時はたくさん注文できる様にお金持ちになって来れたらいいですね(笑)

空港に到着し、フライトの時刻を見ると9時。
私どうやら30分勘違いしていたらしいです・・・。間に合って本当によかった(大汗)
最後の最後までどこか抜けた旅行になってしまいましたね(苦笑)

またこの九州を訪れたい

<Fin.>

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